成年年齢が18歳になって変わったこと、変わらないこと
1.成年年齢が18歳になりました
「民法の一部を改正する法律」が、2022年4月1日から施行され、成年年齢が18歳になりました。
これは、民法4条が「年齢18歳をもって、成年とする。」と改正されたことに由来します。
一般的には、「成人」のほうが聞き馴染みがあると思いますが、法律上は「成年」と言います。
「未成年」というと、聞き馴染みが出てきますね。
そのため、ちょっと変な気もしますが、2022年3月30日には未成年であった18歳、19歳の人は(具体的には、2002年4月2日生まれから、2004年4月1日生まれの人たちです。)、4月1日に成年に達する、とされています。
そして、2004年4月2日以降に生まれた人たちは、それぞれの18歳の誕生日に成年に達することになります。
ちなみに、民法(成年年齢)の改正に先立って、選挙権年齢が引き下げられています。
こちらは、「2016年6月19日の後に初めて行われる国政選挙」から、「満18歳以上の日本国民」に選挙権が認められていますから、約6年をかけて、いわゆる成人の年齢が「18歳」に統一されたとも言えます。
このような成年年齢の見直しは、「18歳、19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するもの」と言われています(※1)
2.「成年」と「未成年」は何が違うの?
「成年」と「未成年」で、何が一番違うかというと、
- 未成年は、単独で法律行為を行うことができない
- 未成年は、父母の親権に服さなければいけない
というのが大きな違いです。
民法第5条には、
1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない
2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる
という規定があり、2項のことを「未成年者取消権」と言います。
この「未成年者取消権」は、未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、理由がなんであれ取り消すことができるという、とても強い権利です。
今まで、18歳、19歳の人は、単独で携帯電話の契約やクレジットカードの契約をすることができず、父母の同意を求められていたのですが、18歳で成年に達する結果、契約行為を単独で行うことができるようになります。
一方、今まで、18歳、19歳の人が単独で行った契約(例えば、エステ契約や投資契約など)は、未成年者取消権を用いて取り消すことができましたが、成年年齢が18歳になったので、今後は取り消すことができなくなります。
「親権」とは,子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限であり義務であるといわれています。
父母の婚姻中は、父母の双方が親権者であり、共同で親権を行使します。
子が成年に達することで、そのような「親の監護」に服することがなくなりますから、住むところや進学先、就職などの進路を、自分の意志で、自由に決めることができるようになります。
また、自分の財産を自分で管理することができるようになります。
たかが2年、されど2年。
成年年齢が2年短くなったことにより、良い面も大きいですが、その分責任も大きくなることに注意が必要ですね。
3.変わること、変わらないこと
今までは、成年年齢が「20歳」であったことから、例えば、
- お酒、タバコが楽しめる年齢
- 10年用のパスポートが取得できる年齢
- 競馬、競輪、競艇などの投票権が購入できる年齢
は、いずれも20歳が基準とされてきたように思います。
しかし、成年年齢が変わったことによって、同じく引き下げられたものと、20歳のまま維持されたものがあることに注意が必要です。
(18歳になったもの)
- 10年用パスポートが取得できる年齢(旅券法)
- 性別の取り扱いの変更の審判(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)
- 帰化の要件(国籍法)
- 医師免許など、各種資格試験の登録要件(医師法など)
(20歳が維持されたもの)
- 養子をとることができる者の年齢(民法)
- 喫煙年齢(未成年者喫煙禁止法)
- 飲酒年齢(未成年者飲酒禁止法)
- 各種公営ギャンブルの購入年齢(競馬法など)
- 大型、中型免許等の年齢(道路交通法)
- 国民年金の被保険者資格(国民年金法)
- 罪を犯した「少年」(少年法)
- 猟銃の所持の許可(銃砲刀剣類所持当取締法)
こうしてみると、身近な分野では、成年年齢の引き下げによっても変わっていないものが多いことが分かります。
なお、罪を犯した場合に、家庭裁判所に送致される「少年」の年齢は「20歳」が維持されていますが、18歳、19歳は「特定少年」として、17歳以下の者とは異なる取り扱いがされています(少年法)。
「異なる取り扱い」の例としては、例えば、少年についての実名報道が禁止されていますが、18歳以上の少年の時に犯した事件について起訴された場合に、実名報道が解禁されていることなどが挙げられます。
ちなみに、「未成年者」に似たイメージのある言葉として、「児童」という概念があります。
こちらは、元々、「満18歳に満たない者」という定義が置かれていることが多いようです。
(例)
児童とは、満18歳に満たない者をいい (児童福祉法)
児童(18歳に満たない者をいう。) (児童虐待の防止等に関する法律)
「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者 (児童手当法)
「児童」とは、18歳に満たない者をいう。 (児童買春等処罰法)
成年年齢の引き下げによって、「未成年者」と「児童」の年齢が揃いました。
成年年齢の引き下げにより、若年者(特にこれまで単独で契約をすることができなかった18歳、19歳)を狙い撃ちにした消費者被害が増えることが危惧されています。
そのため、成年年齢が引き下げられた今だからこそ、学校やご家庭において、契約の大切さや消費者トラブルに巻き込まれないように注意すべきことなどを、改めてお話しをする機会を設けることが大切になってくるように思います。
※1 民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について(法務省)
(※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、執筆時点のものであり、将来変更される可能性があります。)
以上