Column

借金に押しつぶされる男性┃リアークト法律事務所

破産した後に残せる財産には何がある?

先日、「破産をしたら生活ができなくなってしまうのではないか?」というご質問をいただきました。

確かに、ご年配の方の中には、「破産」とか「差押え」と聞くと、突然、裁判所から人(執行官)がやっていて、家財道具などの動産類に「差押え」と書かれた赤い札を貼っていくイメージがあるかもしれません。

お金がなくて膝を抱えている様子

ちなみに、この「差押えと書かれた赤い札」のイメージの元となっているのは、国税徴収法60条2項(前項の規定により滞納者又は第三者に保管させたときは、第56条第2項(動産等の差押の効力発生時期)の規定にかかわらず、封印、公示書その他差押を明白にする方法により差し押えた旨を表示した時に、差押の効力が生ずる。)だと思われます。

例えば、東京都では、「封印」の様式について以下のように規定されていますが(※1)、特に「赤色」を指定していることはなさそうでした。

また、縦8cm×横4cmということなので、皆さんの想像よりは小さいのではないでしょうか。

ダイアグラム

自動的に生成された説明

閑話休題。

そもそも、破産法1条は「…もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」と規定して目的を掲げています。

つまり、破産法は、「借入れをした人の経済生活の再生」も目的としているので、もし、「破産をしたら生活できなくなってしまう」とすれば本末転倒です。

そのため、「破産をしたら生活ができなくなってしまうのではないか?」という心配は要りません。

また、「一緒に暮らしている家族の財産はどうなるのか?」と聞かれることも多いのですが(特に、生活を共にしている配偶者名義の資産を心配される方が多いように見受けられます。)、日本では、「夫婦別産制」(民法762条(夫婦間における財産の帰属)1項 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。)が採用されていますから、基本的に心配していただく必要はないと思います。

「破産手続」を一言でいうと、「プラスの財産(積極財産)」と「マイナスの財産(消極財産・債務)」を整理・換価して、「プラスの財産を債権者に公平に分配する手続」です。

そして、債権者に分配される「プラスの財産」は、債務者の全ての財産というわけではありません。

破産法(34条3項)では、債権者に分配されない財産(これを「自由財産」といいます。)として、次のものを規定しています。

  • 99万円までの金銭(民事執行法131条3号参照)
  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具(同1号)
  • 1か月間の生活に必要な食料及び燃料(同2号)
  • (農業を営む場合)農業に欠くことができない器具、肥料、家畜、種子等(同4号)
  • (漁業を営む場合)水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物(同5号)
  • (その他の技術者・職人等)その業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)(同6号)
  • 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの(同7号)
  • 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物(同8号)
  • 学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具(同11号)
  • 義手、義足その他の身体の補足に供する物(同13号)
  • 差し押さえることができない財産(個別の法律で差押えが禁止されている財産のことで、例えば、iDeCO(個人型確定拠出年金)など挙げられます。)

以上を簡単に整理すると、

  • 99万円までの金銭
  • 生活必需品の衣服、家具、台所用具等
  • 職業に必要な器具等
  • 教育や体の補足に供する物

などの生活に必要なものは、法律上、自由財産=債権者に分配されない財産として認められていますので、ご安心ください。

なお、破産手続の具体的な運用は、各地の裁判所ごとに多少異なりますが、例えば、東京地方裁判所では、上記のほか、

  • 残高が20万円以下の預貯金
  • 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
  • 処分見込価額が20万円以下の自動車
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7
  • 家財道具

などは、「原則として、破産手続きにおける換価又は取立てをしない」とされていますから、手元に残すことができます。

破産手続は、生活を再建するために行う手続きです。

弁護士が介入して債務整理を始める、破産手続の準備をするとなれば、原則として借金の取り立ては止まり、返済の一時猶予が得られますから、その間に、破産手続後の生活をどのように営んでいくかを考えることが重要です。

※1 東京都分担金等の督促及び滞納処分に係る事務手続き等に関する規則 第4条

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000613.html

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